医者を目指して勉強に励んでいた主人公・土岐 穂乃香は、ある夜、突如現れた異形の怪物「鬼」に襲われてしまう。そこへ駆けつけた巫女装束の少女に助けられた穂乃香はかろうじて一命を取り留めるものの、彼女の体内にはすでに鬼の卵が産み付けられていた…。卵を除去する事は叶わず、巫女の少女によって封印が施されるが、これがきっかけで穂乃香は「姫巫女」として目覚め、「鬼」と戦う過酷な宿命を背負う事になるのだった。本作は「生きる」をテーマに、日本に古来より棲息する「鬼」と熾烈な戦いを演じる巫女装束の女戦士「姫巫女」の姿を描いた和風伝奇AVG。
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――もう、夏が訪れていた。いつの間に梅雨は終わったのだろうか。肌にまとわりつくようなジワリとした感覚は消え、代わりにうだるような熱さが大気を支配する。最も生命に力が満ち、やがて来るべく冬に備えてその力を蓄える季節。そして、数年前に……姉を失った季節。「また、思い出してるのか?」隣にいる相方が、そうアタシに話しかけてくる。忘れるはずが無い、忘れられるはずがない。アタシにとっては世界のすべてであり、いくつもの過酷な現実から守ってくれていた、大切な姉なのだから。ひだまりのような暖かさでアタシを包んでくれた、その感触は今も胸に残っている。「思い出すまでも無いわ」そう、アタシにとっては思い出す必要すら無い。その笑顔も、何もかも、ぜんぶぜんぶ、覚えているから。「行きましょ、リチャード」そう、姉が歩いていた道を。鬼と戦うというその意味を、アタシは理解しなくちゃいけない。今はまだわからないけど、ただ……戦うのみだから。
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